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茨城大学農学部飼料資源科学研究室公式ブログ。研究内容、教学支援、講義内容などを発信していきます。
by atsutoyoda
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修士論文が不要に?

修士論文が不要になるというセンセーショナルなニュースが先週ありましたが、ネット上でもその賛否をめぐる議論が沸騰しました。博士号を目指す学生が主な対象になるようです。たしかに、博士号を目指す院生にとっては、修士論文を書く時間が実験や学術論文の執筆に回せるので良いと思えます。ただ、「大学院の早い段階から専門分野に閉じこもるのを防ぎ、広い視野を持つ人材を育てる狙い。」という部分は気になりますね。うちの研究科の修士課程ではすでに異分野の単位も取得しなければならないので、実際に「視野を広げる」教育システムになっています。しかも、修士課程の1年次はパラパラと一年間講義を取り続けないといけないので、じっくり研究に没頭する時間を確保するのは困難です。私の研究室のように、1か月も2か月も動物を飼育し続けて定時に観察するような実験はまずできません。毎日10時間以上ベンチに張り付くなどできる状況にはありません。

文科省は5年間一貫教育の博士課程を普及させたいらしいですが、これ自体は悪いことではないと思います。ただ、視野を広げさせることももちろん大事なのですが、充分に専門分野の研究時間を確保して本当に戦力になる博士を輩出する工夫の方が必要に思えます。実際に、学生の研究時間の確保は10年前よりも厳しくなっている状況で、当時の卒論研究が今では修論研究レベルになっています。修士課程院生の多くの時間は講義や専門分野外のレポート作成、長期化する就活に奪われているわけです。大学院生でも研究に本当に没頭できるのは早い段階で博士課程に行くことを決めた人だけです。広い視野を持たせるのは4年間の学部教育ではできませんかね。名刺の配り方や挨拶するときの頭の角度などビジネスマナーを教えるのもいいですが、それは社会人になってからやればいいことでしょう。学部教育、修士課程、博士課程でそれぞれ何を教育すべきなのか、もっと整理する必要がありそうです。読み書きそろばんから始まって、広い学問的視野をもつ、専門における顕著な業績を出す、かつ社会人(人間?)としてのマナーをもつ、などが高等教育に期待されているようですが、家庭や社会の問題要素をすべて押し付けられているのが今の大学という気がします。その中から何を選ぶのかということが、大学の機能別分化につながるのでしょうが、ここはまだあまり議論が進んでいないように思えます。


【参考】
「大学院、来年度から修士論文不要に 試験などで審査」(日経新聞2011/10/26 22:07)

「文部科学省は26日、大学院で修士論文を作成しなくても修士号を取得できるよう省令を改正する方針を決めた。博士号取得を目指す大学院生が主な対象で、論文の代わりに専攻だけでなく関連分野も含めた幅広い知識を問う筆記試験などを課す。大学院の早い段階から専門分野に閉じこもるのを防ぎ、広い視野を持つ人材を育てる狙い。来年度から適用する。」

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E0E4E2E6EB8DE0E4E3E2E0E2E3E39180EAE2E2E2
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by atsutoyoda | 2011-11-01 18:41 | 教育
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